MIYASHITA'S EYE

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成年後見業務のグレーゾーンを何とかして! (2013年5月20日)

5月19日、社会福祉士会主催の成年後見人「死後の事務」の講座を受講してきました。昨年、私が3年間社会福祉士として担当させていただいた被後見人の方が亡くなりました。そのあと、納骨するまでかなり大変な思いをしたので、どこまでがやるべき業務でどこからはやらなくていい業務なのかを知りたくて受講したのです。講師は現在25件の後見業務を受任しているという司法書士の先生でした

◆法律上、法定後見人が行うべき死後の事務は4つだけ

法律上、後見人は被後見人の他界と共に、被後見人に関する一切の権限を失います。先生によれば、法律上、後見人が行うべき業務は下記の4つ。

①管理(している財産)の計算
②家庭裁判所への報告
③後見終了の登記
④管理財産の保管と相続人棟(遺言執行者)への財産の引渡

しかし実際にはこの4つでは済まず、後見人がやらざるをえない様々な業務が発生します。入院中の被後見人が亡くなれば、遺体を引き取ってくれと病院から言われますし、葬儀、火葬、納骨をする親類がいなければ、放置しておくわけにも行きません。先生によれば、そうしたさまざまな業務は、後見人の義務ではないが、急迫の事情があり、法律上行わなければやむを得ない「応急処分業務」と、法律上行う義務はないが行わざるをえない「事務管理」に分けられるとのこと。

というか、この2つの分けられない業務は「やってはいけない」と釘を刺されました。


◆情で法律上の業務範囲を超えてはダメ

私の場合、亡くなった被後見人に生前、密な交際のある親族がいなかったため、火葬や納骨などにかなり関わらざるをえなくなりました。しかしやりながら、「これは後見人がやるべきこと?」とかなり疑問に思いました。親族でないとできないことなのに、親族が動いてくれない。そんなことが多々あり、本当に困り果てて、家庭裁判所に相談したら、「あなたのやっていることは後見人の業務範囲を超えているので、親族にこれ以上はできないと伝えて手を引きなさい」と言われました。そう伝えたら、ようやく親族が動いてくれて事なきを得たのですが…。

後見人としては、3年間担当すれば情もありますし、生前の意向を大切にしたいという思いもあります。しかし、今回の講座を受けて、そんなことで法律上の業務範囲を超えてはいけないのだと猛省しました


◆個人情報保護法が過剰に機能
しかし一方で、権限や義務がないのに行わなくてはならない「応急処分業務」や「事務管理」が発生するのはどうも納得がいきません。

私の被後見人は、すでに配偶者も一親等、二親等の親族もすでに他界しており、縁の薄い三親等の親族が相続人でした。社会福祉士会では生前に推定相続人を調べておくことが望ましいとしているため、生前に戸籍謄本の請求を行ったところ、推定相続人調査という理由では発行できないと断られてしまいました。これが弁護士、司法書士であれば職権で発行してもらえるのですが、社会福祉士はダメ。個人情報保護法が過剰に機能しているのです。

ではどうすればいいのかと聞くと、被後見人が亡くなったあとで相続人調査のために請求すれば発行するとのこと。後見人には、被後見人の他界後、何の権限もないはずなのに、です。納得がいかないまま、結局、推定相続人を把握できずに被後見人の死を迎えました。 br />


◆法的根拠がないのにサインを求めてくる不思議
法的権限はないのに、という点で言うと、医療行為についての承認、判断や、施設入所の際の身元引受人、連帯保証人を求められるのも本当に困ります。インフルエンザ予防接種を受けることへの承認のサインから延命治療を行うかどうかの判断まで、後見人には病院で様々なことを求められますが、どれも法的権限を持っていません。施設入所では、サインをもらわないと入所させられないと言われれば、仕方なく、法的には何の根拠もありませんよと繰り返し伝えつつ、サインをせざるをえないこともあります。

天涯孤独な患者の手術の同意はどうしているのでしょうか。後見人がいなければ、医師が必要だと判断した手術は承認を得なくても行っているはずです。施設入所の身元引受や連帯保証は、サインをしなくても後見人が付いていれば、死亡後の遺体の引き取りも(本来権限はありませんが)、施設利用料の支払いも、問題は起こらないはずです。それをなぜ、法的根拠がない、意味がないと伝えても納得してくれず、繰り返し求めてくるのかな、と思います。

被後見人の死後の対応も含め、後見人の業務範囲と権限を、現実に即した形で見直し、また、病院等関係機関に周知してほしいものだと思います。(2013年5月20日)