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介護業界のいま

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高専賃に気をつけて
(2009年9月26日)

◆高専賃は「施設」ではなく「賃貸住宅」

最近増えている高齢者専用賃貸住宅、通称「高専賃」。特別養護老人ホームは100人待ち、介護老人保健施設は3ヶ月程度で退所を促されたり、通院が必要だと入居を敬遠されたりするケースが多くなかなか安住の地となりません。そんな中、急激に増えて

いる高専賃は利用者からすると入りやすい「施設」に見えるようです。

しかし、高専賃は「施設」ではありません。あくまでも「賃貸住宅」です。つまり賃貸のアパートやマンションと同じ「借家」であり、基本的には自立した生活を送るするスペースです。このため、介護が必要になった場合は、外部の訪問介護サービスやデイサービス、訪問看護サービスを利用することになります。

入居した利用者の一体どれぐらいが、このことをきちんと理解しているでしょうか。

◆高専賃側が誤解を招く説明をしている場合も

というのも、まるで施設と勘違いするような、別料金での付帯サービスのある高専賃が非常に多いからです。例えば、食事の提供をする、外部の訪問介護サービスが入らない時間帯は住宅に常駐する職員が必要に応じてサービス提供をする、と謳っている高専賃もあります。

契約時に、「あくまでも住宅であり、施設のような24時間の介護サービスは受けられない」と、わかりやすく説明していればいいのですが、そういう高専賃ばかりではありません。「職員が24時間常駐しているから、何かあったら対応します」など、まるで24時間切れ目なくサービスを受けられると誤解してしまいそうな説明をしている高専賃もまま見られます。

その結果、「施設」と同じようなものだと勘違いして入居し、「サービスが十分受けられない」「事故が起こったが、責任の所在がはっきりしない」「健康管理が不充分で、脱水症状で入院した」など、様々な問題が起きています。

もちろん、施設並みに行き届いたサービスを提供している高専賃もあります。しかし、高専賃には広さや設備の規定は設けられていますが、サービス内容についての規定は一切ありません。どのような付帯サービスを提供するかはその高専賃次第であり、どこもそれを監視する機関はありません。現時点では、いい高専賃もあれば、ちょっと怪しい高専賃もある。そういう状態なのです。

◆サービス内容については規定も指針も監視機関もない

高専賃の賃貸住宅としての管轄は国土交通省ですが、サービス内容については一切関与しません。厚生労働省も住宅の整備等については、国土交通省と共同で基本方針の策定をすることになりましたが、サービス内容の監視にまでは踏み込んでいません。同様に、都道府県も市町村も、「あくまでも賃貸住宅」という判断で、関与する動きはありません。つまりどのようなサービスを提供するかは、個々の高専賃次第であり、現時点ではなんの指針も規定もなく、監視機関もないのです。

このため、前述のような問題が起きたとき、苦情を訴える先もありません。訪問介護など、外部の介護保険サービスの提供中の事故であれば、市町村や都道府県、あるいは都道府県国民健康保険団体連合会などが対応しますが、介護保険外のサービスや、健康管理ができていなかったなど包括的な問題になると、対応できるところがないのです。あるとしたら、契約の問題ということで消費生活センターということになるのでしょうか。

同じような問題として、無届け有料老人ホームがありましたが、これは栃木県の無届け有料老人ホームの火事以来、マスコミでも再三取り上げられ、厚生労働省も少し力を入れるようになりました。厚生労働省から都道府県に「無届け(厚労省は「未届け」と表記していますが)であっても、防災上や衛生上問題がある施設は、改善指導するように」という通達を出し、少し都道府県の取り組みも変わってきたようです。

何よりこの通達により、無届け有料老人ホームに対する苦情には、都道府県が対応すべき立場に立たされたのですから、利用者にとってはありがたいことです。しかし、高専賃のサービスに関しては、これまで述べてきたようにどこも管轄していません。入居を考えている方は、何かあったとき苦情を言いたくても訴える先がない可能性が高いことを、よくよく承知した上で入居されることをおすすめします。

また、高専賃で常駐職員として働くかたも、非常に曖昧な立場で働くことになることを理解されておいた方がよいと思います。